【全日本2019特集】「ディベート聞く専」のススメ

 今回は、CoDA専務理事の久保さんに「『ディベート聞く専』のススメ」というテーマで記事を書いていただきました。ディベートを見るだけでも意味があること、見る専ならではの楽しみ方などについて書いてくださっています。
大会に見学に来られる前に、是非ご覧ください!


 将棋界には「見る専」という言葉があります。将棋ではプロではないもののアマチュアとして選手として活躍する人もたくさんいるのですが、「見る専」の人は自分では将棋を指さないがもっぱら観戦している人の事をいいます。
 彼らは自分で指さないわけですが、将棋を見る目は素晴らしく的確です。私自身は将棋はもっぱら疎いのですが、こうした見る専の人々は試合の解説が大変に上手です。いうなれば、選手が指した手がいかにすごいのかという事を分析する力に秀でています。自分ではその一手を生み出せないかもしれないが、その一手のすばらしさを解釈した楽しめるということです。
 このように書くと、なんだか特殊な人たちに見えますが、実は世の中の大半は「見る専」の人たちです。野球、サッカーをはじめとしたプロスポーツの世界を考えてみればよく分かります。圧倒的大多数の人は選手ではありませんし、アマチュアですらプレイしていない人が多いです。その意味で、個人的には、ディベートに関わった方々の「見る専」が拡大することをとても強く期待しております。
 しかしながら、ディベートに関してはどうも「見る専」の数は少ないです。もちろん0ではありませんが、何となくディベートを見るだけというのは、あまり聞きません。しかし、筆者は「見る専」は非常にコスパの良いトレーニングだと思いますし、何よりディベートの楽しみ方として広がってほしいと思っています。そこでこの原稿ではディベート「見る専」のススメと題して、いくつかのポイントをご提出してみたいと思います。

1.ディベートを見るだけでも意味はある
 中高で競技ディベートの大会に参加していたが、大学になってからは他のことがやりたい、もしくは忙しくて選手の時と同じようにはできないから無理。という人もいるでしょう。もちろん選手として上手くなりたいのであれば、選手として関わることをお勧めしますが、ディベートで身に着けた能力をさび付かせない、もしくはトレーニングしたいと思うのであれば、見る専でも可能です。なぜなら、ディベートで身につく力の大半はジャッジで培われるからです。
 よくジャッジをするようになってから、ディベート能力が向上したという声を聞きます。また、当団体の瀧本の著作「武器としての決断思考」ではジャッジをするために選手をするといっても過言ではないとまで言っています。ジャッジは肯定否定に捉われず、目の前に与えれた情報の中で最適解を決断し、それを伝える役割です。それはディベートで培われる力の中で最も重要なもののひとつである決断思考そのものです。役割が与えられている選手以上にジャッジは意思決定と説明責任の力が問われますが、やっている行為は「試合を見て判断する」ことです。つまり、見る専の人と何も変わらないのです。

2.「見る専」で意思決定力は磨ける、しかも気楽に。
 そのように考えると、ディベートの見る専はジャッジと変わらない立場で参加しているといえます。唯一違うのは、意思決定や説明責任を強制されないところくらいです。ここまで話せば、もうわかりますね。そう、ジャッジと同じ気持ちで見ればいいのです。単に試合をみるだけではなく、自分もジャッジになったつもりで、試合を見た後に判定を出してみましょう。そうすれば、十分ジャッジをやるのと同じ訓練ができます。ですが、ジャッジでもありませんから、間違っていても大丈夫。自信がなくても大丈夫。おまけに、試合の最後にはジャッジが色々話してくれますので、そういうことかーと良く分かります。
 ここでポイントなのは、見る専でディベート能力を向上させたいなら、漫然と聞かないということです。必ずジャッジと変わらない気持ちで聞きましょう。いうなれば、エアジャッジです。

3.見る専ならではの楽しみ方
 見る専にはジャッジとは違う楽しみ方もできます。それは、仲間とわいわい見るという事です。1人でもいいのですが、可能ならかつてのディベート仲間などを誘ってみてください。そして、試合を見ながら、「次はどんな反駁で返すのか」「俺ならこうする」などと予想しあいながら、わいわいと楽しむ。そして、試合が終わって、ジャッジの判定までの時間では皆で判定をお互いに予想しあってみてください。そして、何よりジャッジではないので自分が好きな試合を見る事ができます。後輩の試合、友達の試合、有名チームの試合。ジャッジは試合を選べませんが、観客は試合を選べます。オーストラリアのパーラメンタリーでディベートでは、ピザとビールを片手にディベートを観戦するなんてのもあるそうです。

4.まずは気楽に大会を見学しよう
 数年間ディベートに足を運んでいないので、ちょっと気まずい。ディベート研修を1度受講しただけなので、ハードルが高い。そんな気持ちをもし抱えているならば、気にせずに会場へ足を運んでみてください。試合に慣れるまで少し時間が必要かもしれませんが、一度コツを掴めば楽しさも見えてきます。何より、ディベート会場での議論は、優秀な選手たちが何十時間、何百時間と考え続けたきたことの中でも、凝縮された良いものだけが出てきている場所。新しいアイデア、視点に満ち溢れているはずです。慣れないうちは頭も疲れるかもしれませんが、そのあとのビール(未成年はコーラ等)はとても美味しいですよ

少しでも気になった方は、まずは1試合だけでも、決勝だけでも、ぜひご観戦ください。


久保さん、ありがとうございました。
今回で、今年の全日本大学ディベート選手権大会の特集記事は最後となりました。これまでの記事を読んで、少しでも大会に興味が湧いた方は是非大会にいらしてください!お待ちしております!