連載の第一回では、「ディベート」とはなにかを説明しました。
第二回である今回は、いよいよどういったルールに基づいて議論(ディベート)をしていくかを解説していきます。
なお、大会のルール自体はこちらから確認可能です。
1:勝ち負けの付け方(どのようにジャッジを説得するか?)
ディベートの試合では、選手とは別の立場である第三者であるジャッジ(審判)が試合の内容を聞いて勝敗を決めます。
そこで、ジャッジはどのようにして勝敗を決めているかが大きな疑問になると思いますが、まずはじめにどのような形で選手がジャッジを説得するかを考えてみたいと思います。
ディベートの論題では「日本は◯◯を導入すべきである」「日本は◯◯を廃止すべきである」など、ある政策を導入したり廃止することの是非を論じることが多いです。つまり、国が新しいアクションをすることの是非を論じます。
ここで、少しディベートから離れてみます。
友人との帰り道、新しくできたちょっと気になるラーメン屋に友人を誘うというシチュエーションを考えてみましょう。
「新しくできたラーメン屋にいってみようよ」
仲の良い友人であれば「いいよ」とすぐに返事をしてくれるかもしれませんが、もしかしたらその友人はダイエット中でラーメンを避けていたり、他に行きたいお店があるかもしれません。そんな友人は、
「なんで?」
と言ってくるかもしれません。その時に、どのような言葉を友人にかけるでしょうか。
「スープにこだわっていてすごい美味しいらしい」
「最近流行りの健康志向でヘルシーなラーメンらしい」
「オーナーの人が気さくで個性的な人らしく、その人との会話が楽しいらしい」
など、人によって様々かもしれません。
しかし、全てに共有して言えることは「ラーメン屋」にいくことの「いいこと」を主張している点です。
つまり、新しいアクションを起こす時にはその「メリット」を説明することで、相手を説得することが一般的に行われています。
逆に、新しいアクションを起こすのを否定するには、反対に「デメリット」を主張することが多いのではないでしょうか。
「あそこのラーメンはこってりしてるという噂だよ。太りそうだから行くのはやめない?」
こうした「メリット」と「デメリット」を示して説得をしていくことが、ディベートの試合でも広く行われます。
肯定側は論題を導入する(=新しいアクションを実施する)ことの「メリット」、否定側は論題を導入することで生じてしまう「デメリット」を実際のディベートの中では論じていくことが多いです。
詳細はのちほど説明していきますが、そのあとお互いに反論していき、その結果
残った肯定側の「メリット」と否定側の「デメリット」をジャッジが比較し、上回る方が勝ちという形で勝敗がつけられることが多いです。
(一部例外はありますが、ここでは説明を簡素化するために割愛します)
まとめ
・新しいなにかを始めたり止めたりする際にはその理由が求められる。
・肯定側は論題を実施した際の「メリット」、否定側は「デメリット」について説明する
・ジャッジはそのメリットとデメリットを比較して勝敗を決定する
2:試合の進行について
裁判でも話す内容やその順番がある程度決められているように、ディベートにおいても大まかな議論の流れが決まっています。
大会のルール等によって時間等が異なりますが、以下の4つのパートで構成されています。
①立論
②質疑
③第一反駁
④第二反駁
この四つのパートを肯定側と否定側で交互に実施していきます。
そのため、実際の試合の進行は以下のようになります。
①肯定側立論
②否定側質疑
③否定側立論
④肯定側質疑
⑤否定側第一反駁
⑥肯定側第一反駁
⑦否定側第二反駁
⑧肯定側第二反駁
まずは四つのパートについて、それぞれの中身をみていきましょう。
①立論
立論はそれぞれの立場において、最も有力な自分の立場を支持する理由を述べるパートです。簡単に言えば、主に肯定側であれば「メリット」、否定側でれば「デメリット」の内容を説明する場所になります。ディベートにおいては反論のやりとりも魅力の一つですが、反論する対象がなければ議論も始まりません。それぞれの立場の説得理由で核となる議論について説明します。
②質疑
立論の次は質疑です。質疑は相手の立論に対して質問、また立論を担当した選手がその質問に対して応答をするパートになります。
正確に議論を進めるためには、相手の議論をしっかりと理解する必要があります。特に証拠資料を用いて議論をするディベートにおいては、相手から出された証拠資料やデータの詳細について把握する必要があります。また相手の用いている単語の意味のすり合わせ等も必要です。次にある反論のパートに向けて、相手の議論の理解をするためのパートです。
また意外にもディベートにおいて、相手の選手と話す唯一のパートでもあります。
③第一反駁
反駁(はんばく)は聞きなれない言葉かもしれませんが、反論とほぼ同じ意味です。
相手の立論の内容に反論をするパートになります。また、試合の進行上、否定側の第一反駁から行います。そのため、肯定側の第一反駁は否定側からの第一反駁に対する再反論も実施可能です。
④第二反駁
最後のパートになる第二反駁は、試合の総括をするパートになります。
立論に対しての議論の応酬から、残った議論を再評価し、何故自分たちの議論の方が優っているかを説明します。まさにまとめのパートです。
このようにディベートにおいては、「議論を出す」「質問する」「反論する」「総括する」
という議論の要素をパートごとに分けて実施します。
これは議論の流れをあらかじめ決めることにより、議論が拡散せずにすることを可能にしています。そのため、「立論」で出していないメリット等を「第一反駁」「第二反駁」でしたり、「第一反駁」でしていなかった反駁を「第二反駁」でするなど、相手に議論をする機会をあえて与えないことは反則となっており、その議論は試合の判定から除外をします。
そして、パートごとにスピーチの時間が決められており、スピーチをする選手は一人で演台でジャッジに向けてスピーチをします(質疑では質疑をする側とされる側の二人が演台に並びます)。
また、各パートの間に準備時間が決められており、その間はチーム内で話して作戦会議を取ることが可能です。
パートごとのスピーチの時間、準備時間は大会によって異なります。詳しくは大会ルールを参照してみてください。
一例ですが、CoDAの大会では、
①立論(6分)②質疑(3分)③第一反駁(4分)④第二反駁(4分)です。
まとめ
・ディベートの試合では話す内容と時間が決められている。
・議論の流れは「立論」「質疑」「第一反駁」「第二反駁」の4つのパートに分かれる。
・相手に反論の機会を与えない議論をした場合、判定から除外される。
3:結びと次回の予告
前回の内容から徐々に「ディベート」のルールという込み入った内容に入ってきました。説明の都合上、ポイントを絞って解説しましたので、こちらの記事を読んでいただいた後に、ルールを再度読んでいただくと、内容についてより理解が深まると思います。是非、もう一度見てみてください。
さて、次はディベートの議論の「型」について解説をしていきます。
ディベートのスピーチでは「こういった形でスピーチせよ!」というルールは定められていません。スピーチでは話す内容は基本的には自由です。
それゆえに、多くの選手は一定の「型」に従って、スピーチを進めています。その議論の基本的な「型」を理解することで、議論の内容の理解自体の助けになりますので、その「型」について解説をしていきます。